漫才『お隣さん』

A:ボケ

B:ツッコミ


A「ご近所さんのコミュニケーションがめっきり減りましたなあ」

B「どうしたのよ急に」

A「今、隣に誰が住んでるかとか知らないじゃないみんな」

B「まあそうだね」

A「ご近所付き合いとかちょっとやりたいからさ、僕おすそ分けしにいくわ」

B「ああ、作りすぎちゃったんです、みたいなやつ?」

A「そうそう。だからお隣さんやって」

B「分かった」

(コントイン)

A「ピンポーン」

B「ガチャ(ドアを開ける)。はい」

A「どうも、205号室の○○です」

B「ああ、こんばんは」

A「ちょっとラーメン作りすぎちゃったんですけど」

B「…ラーメン作りすぎることあります?」

A「分量が分からなくて」

B「そんなことないでしょう。え、麺何玉入れたんですか?」

A「7玉」

B「おバカなんですか?」

A「いけるかなと思ったんですけどねえ。食べ残しちゃいました」

B「え、食べかけ?」

A「じゃあ分かりました、もう1口だけ頑張ります(1口すする)。はい(渡そうとする)」

B「要らないですよ」

A「ええっ?」

B「もちろん要らないですよ」

A「え、でも鶏白湯ですよ?」

B「関係ないですよ」

A「ええっ?何白湯ならいいんですか?」

B「何白湯でもダメですよ。鶏しか知らないですし」

A「スープだけでも!」

B「やめて下さいって」

A「こだわってるんです」

B「目が怖い」

A「鶏を丸ごと8時間煮込みまして」

B「知らないですけど」

A「そのスープを1回土に全部バシャーって流しまして」

B「もったいない!え?」

A「で、その土で野菜を育てまして」

B「はい?」

A「それをニワトリに食べさせて育てまして。で、成長したニワトリを丸ごと8時間煮込みまして」

B「怖いことしてる」

A「そのスープをまた土に全部流して」

B「え?」

A「で、またその土で野菜を育てて」

B「は?」

A「ニワトリに食べさせて育てて、っていう。その繰り返しですね」

B「…ラーメンどこいったんですか!そのスープは?」

A「このスープは市販の鶏白湯の素です」

B「なんなんだよ。じゃあ今の話はなんですか?」

A「今のは、僕の生活の営みです」

B「すぐにやめた方がいいですよ。そんな営みは」

A「そうですか」

B「怖すぎるからその営みは。てかどこがこだわってるんですか市販のやつで」

A「味の素なんです」

B「やかましいよ。大体みんなそうですよ」

A「食べていただけませんか」

B「食べないですよ」

A「もう麺がスープを全部吸っちゃってるんで」

B「7玉も入れるからですよ」

A「2玉は食べました!」

B「5玉残ってるんですか!無理無理」

A「なんでですか!」

B「フードファイターじゃないんですから」

A「お願いします」

B「無理ですって」

A「お願いします」

B「無理です無理です」

A「お願いしますって」

B「本当にごめんなさい」

A「少しだけでもいいんで」

B「すいません」

A「じゃあもういいよ!」

   A、鍋の中身を捨てる。

   B、呆然。

B「引っ越そう、このマンション」

A「(独り言で)もういいよ…」

B「この人お隣なのヤバすぎる」

   A、泣き出す。

B「いやいや。ちょっと、片付けて下さいよちゃんと」

A「もう肥料にするしかないじゃん…」

B「だからその営みやめて下さい」

A「じゃあ、また来ます」

B「二度と来ないで下さい」

   B、ドアを閉める。

(コントアウト)

A「いやー、ご近所付き合いっていいですね」

B「孤島に住んで下さい」

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