梅雨のひとコマ

小雨でも傘をさす派だ。


駅に向かう駅前の道を、傘をさしながら歩いていた。


周りの人が若干迷惑そうな顔をする。


でも濡れたくないもんなあ。


申し訳ない気持ちも抱きながら。


隣を男の人が抜かしていって、僕はその人のことを見て、その一瞬、前がおろそかになって、前を歩いていたおじさんに傘の先がツンッと当たってしまった。


でも当たり方があまりにもソフトだったものだから、当たった位置も割と頭頂部に近いところだったから、多分おじさんは雨のしずくが落ちてきたのだと勘違いして、空を見上げた。


ごめんなさい、僕の傘なんですとは言えないので、僕はこっそり傘を閉じる。


おじさんは後ろの僕の仕業だとは気づかず歩き続ける。


僕は駅の軒下からおじさんを見る。


おじさんは、カバンから折りたたみ傘を取り出して、さした。



あら。



さすんかい。


雨降ってきたと思ってさしたんだろうな。


今度はおじさんが周りの人が若干迷惑そうな顔をされることになるだろう。


なんか色々ごめんなさい。


でも、全く知らない人の行動を少しだけ変えたことに、1人で少しニヤニヤする。


今度は改札を通ってきた人にニヤニヤを見られて変な顔をされた。


人は、うっすら他人と交わりながら生きているものだなあ。


たとえソーシャルディスタンスを取っていたとしても。


時間にすると1、2分のことだが、なんだか楽しいひと時であった。


そんな雨の駅前であった。


この辺で擱筆。

写真は「え、また100人以上出たんすか!」

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