短編『水たまり』

明け方、屋上に出てみる。 

トロッとした時間が流れる。 

屋根たちがじっとしている。 

右奥の方の空だけじわりと薄暗い白。 

人影はない。 

通りの向こうからは、ずっとエンジン音。 

青梅街道は、眠らない。 

目を閉じる。 

キン、と冷たい。 

目を開ける。 

トロッ。 

トロッとした時間にくるまれて、心が安らぐ。 

蒲団に戻ろう。 

夜でも朝でもないようなこの時間。 

僕もトロッと溶けていきそうなこの時間。 

そう思った時、僕は溶けた。 



屋上に、小さなまるい水たまり。
写真は「変なトマトラーメンを作った。」

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