スーパーにて
スーパーに昼食を買いに行った。
店内アナウンスが流れる。
「ご来店のお客様へ申し上げます。当店は、私服警備員が巡回をしており、防犯には十分対策をいたしております」といったような文言だった。
「ご来店のお客様へ」と一旦オブラートに包んでおきながら、めちゃくちゃ悪い人に向けているメッセージだなと思った。
何もしていないのに、どの人が私服警備員か窺ってしまう。
逆に、カゴなんか持って「買い物してますよ」というオーラを放っている人の方を疑ってみたりしてしまう。
昼食を持ってレジへ。
レジ店員は、研修中の西村さんという若い女性だった。
首からかけた名札に「わたしは笑顔であいさつします」という一言が書いてあった。
しかし、西村さんは笑ってはいなかった。
マスク越しにも分かった。
やる気がないというわけではない真顔だ。
緊張している風にも見えない。
きっとこの人の地の顔なのだと思った。
西村さんは、消え入りそうな声で会計を読み上げている。
よっぽど意識していないと、すぐ固い表情になってしまうのだ。
だから、「わたしは笑顔であいさつします」という一言の入った名札で自分を戒めているのだ。
笑顔でお客さんに接することができるように。
いや、もしかしたら、そのことを少し嫌味な店長が指摘してきて、「君はじゃあ名札に『笑顔であいさつします』って入れといたらいいよ」などと言われたのかもしれない。
その時もうまく笑って返せなかったのかもしれない。
僕は、「ありがとうございます」と目を見てお礼を言ってみた。
西村さんは、少し申し訳ないような顔をして会釈した。
スーパーを後にする。
地上へ上がるエスカレーターは、いつもより動くのがゆっくりだった。
この辺で擱筆。
写真は「入れ物汚いと信憑性減っちゃうよ。」
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