人が少ないからこその。
電車は人が増えた。
1週間ほど前までは席に座れたぐらい空いていた。
その時のことを思い出したので、書き留めておく。
1週間前の夜。
車両には僕しかいない。
世界に僕だけしかいなくなったのかと錯覚しそうになっていたら、2人の男の人が乗り込んできた。
30代ぐらいか。
先輩と後輩らしい。
先輩が大声で電話していた。
電話の相手は後輩の奥さんらしい。
いやまあ人ほとんどいないけど。
電車のマナーは、人がたくさんいてこそのマナーだから、人が少なければまあいいのかな、なんて思ったりもする。
でもうるさいなあ。
声がものすごく大きく聞こえてくる。
「まずは子どものことを一番に考えねえとだよ」
「もうすぐガキができて一家の主になる男なんだから、ぜってえ大丈夫だよ」
あら。
もうすぐ子どもが生まれるらしい。
後輩は照れ臭そうに座っている。
「女の子は、「そんぐらい気づいて」って思うだろうけどさ、俺ら男は気づかねえから。そこはさ、分かってやってよ。まあでも…ごめんな」
…憎めなくなるなあ。
最後、そこだけ声を落として、「幸せになれよ」。
いやいや。
アツいな。
人がたくさんいるところでは、そんなアツい話はできないのかもしれない。
許してあげよう。
人が増えたら、マナーは守ってね。
この辺で擱筆。
写真は「ゆっくりと、戻っていく。」
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