短編『スフマートの白昼夢』

わたしが、小さめのベンチに、あたまをはみ出させながらよこ向きにねていると、となりのおばあさんがわたしの右の耳にさらさらと砂を流しこみはじめたので、少しびっくりしましたが、その砂はそのままわたしのあたまの中を通って左の耳からさらさらと地面に落ちてゆくので、ああ、わたしは砂にうもれて化石になることはないのだわと安心していると、落ちる砂を見ていた小さなチャイロイサルが、「いっ分たったよ、いっ分たったよ」と小さな声で叫んだので、それを聞いた、奥の木馬に座っていたおじいさんは立ちあがり、かまどからふっくらと焼きあがったパンをとり出し、ひとつを自分で食べると、ひとつをおばあさんに、ひとつをチャイロイサルに、残りをぜんぶ空に投げると、いつの日からか空を飛べるようになったペンギンたちがそれを上手にキャッチしてとび去っていったので、ああ、わたしの分のパンは今日もないのね、と少しがっかりしていたら、チャイロイサルがパンをちぎってわたしにひと口食べさせてくれたのに、わたしったらうれしくなって、よく噛まずに飲みこもうとして喉につかえてしまって、それからはよくおぼえていないのだけれど、わたしは今日もポプラの葉っぱが敷きつめられたベッドの上で、そのパンの夢をなん年もなん年も見つづけているのです。




・・・外出ができなくて病んでしまったわけではない。


自分のカラーと違うようなものを書いてみる試みであった。


意味を捉えるのが難しげなものを書いてみる試みであった。


けれど若干、この前書いた黒田夏子さんっぽくなってしまったかな。


自分らしさは誰もが持っているであろうが、自分らしい文章を書くのは技術と経験も必要となってくる。


創作、創作。


この辺で擱筆。

写真は「床にいた、なにかしらのいきもの」

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